ビートルズ「蜜の味」

スタンダード・ナンバーのカバーです

中山康樹氏は「どうしてこの曲をレコーディングしたのか」みたいなことを言っていて

まあ、確かにどうして?という気はするんですが

当時、ポールにこの種のスタンダード曲を歌わせると

リバプールでは右に出る者がいなかったらしく

デビュー前はこの曲をリクエストされることがよくあったそうです

つまり「蜜の味」はビートルズのレパートリーで、しかもウケがよかったわけです

それがレコーディングした理由でしょう

 

聴きものはポールのボーカルですが

I will return ~のところでベースがウォーキング・ベースになるところは

その後のポールのメロディアスなベースを知る者には

ああ、このころからポールは…と思わせてくれます

 

大人のロック!編「ザ・ビートルズ全曲バイブル」によると

「プリーズ・プリーズ・ミー」収録の「蜜の味」は

第5テイクにボーカルに重ねたもの(第7テイク)です

第6テイクはBootleg Recordings 1963で聴くことができます

 

(参考文献)

中山康樹「これがビートルズだ」(講談社現代新書)

大人のロック!編「ザ・ビートルズ全曲バイブル」(日経BP社)

ビートルズ「ドゥ・ユー・ウォント・トゥ・ノウ・ア・シークレット」

ジョンの作品をジョージが歌っています

リンゴのボーカルはアルバムに1曲、ジョージは2曲ということなのでしょう

ジョージはコーラスもできてリンゴより歌えるわけですから

 

録音日が1963年2月11日なので

当時のジョージはもうすぐ20歳とはいえまだ10代、ジョンは22歳です

ポールはジョンより1歳年下といっても

自作曲の名義をレノン=マッカートニーとする取り決めをするほど

ジョンはポールを認めていました

ジョージは末っ子みたいな扱いだったのでしょう

もしかしたらジョンはジョージの面倒をみてるつもりだったのかもしれません

 

さて、曲についてですが

「秘密を知りたいかい?君が望んでることさ。君に恋してる」みたいな感じで

アイドルが歌いそうな甘ったるい歌詞です

リンゴが出している拍子木を打つような音はドラムスティックを叩き合わせる音で

誰のアイディアなのかはわかりませんが面白い発想です

オーケストラやラテンバンドでは拍子木みたいな楽器クラベスを使いますね

坂本龍一の「戦場のメリークリスマス」の”コーン”という音は

あるライヴ映像ではクラベスを打って出していました

 

(参考文献)

中山康樹「これがビートルズだ」(講談社現代新書)

大人のロック!編「ザ・ビートルズ全曲バイブル」(日経BP社)

ビートルズ「ベイビー・イッツ・ユー」

この曲もシュレルズのカバーです

オリジナルは間奏がチープな感じのオルガンで

オールディーズの雰囲気いっぱいです

ビートルズのベイビー・イッツ・ユーは

「自分ではどうにもできないんだ。それは君のせいなんだよ」

みたいに歌うジョンのボーカルが聴きものですが

ジョージのギターにかぶせたジョージ・マーチンのチェレスタ

ちょっとオリジナルの雰囲気を思い出させてくれます

チェレスタが入らないバージョンは「Live At The BBC」で聴くことができます

 

この記事を書いていて気づいたのは

作曲がバート・バカラックだということでした

バート・バカラックは今も存命中で

Apple Musicで作品を聴くことができます

プレイリスト「はじめてのバート・バカラック」の1曲目は

B. J. トーマス「雨にぬれても」です

 

(参考文献)

中山康樹「これがビートルズだ」(講談社現代新書)

大人のロック!編「ザ・ビートルズ全曲バイブル」(日経BP社)

ビートルズ「ボーイズ」

ガールズ・グループ、シュレルズの曲のカバーです

オリジナルは「男の子にキスされたら、こんな気分になるんですって」

みたいなノリノリの曲です

ビートルズは「ママが言うには」のところを「オレの彼女が言うには」と変えたり

間奏がサックスなのをジョージのギターに変えたりしています

 

リンゴのボーカルもノリノリで「男の子の話をしてるんだよ」と歌うところは

今だとビミョーな感じもしますが

当時は女子のみなさんがここで「キャー」と言うところだったのでしょう

リンゴはライブでも「オーライ・ジョージ」と言っていて

Bootleg Recording 1963」と「Live at the BBC Vol.2」で聴くことができます

ところどころで聞こえる叫び声はポールなんでしょうか

リンゴだけでなく、みんなノリノリです

 

(参考文献)

中山康樹「これがビートルズだ」(講談社現代新書)

大人のロック!編「ザ・ビートルズ全曲バイブル」(日経BP社)

ビートルズ「チェインズ」

米国のガールズグループ「クッキーズ」の曲のカバーです

クッキーズは3人組なので

ビートルズのボーカル1人にコーラス2人というスタイルは

この曲をカバーするのにもってこいでした

ガールズグループといえば、あのシュープリームス、ザ・ロネッツも3人組

日本で「天使のささやき」がヒットしたスリーディグリーズは当然3人組

のちにビートルズがカバーするマーヴェレッツも3人になったり4人になったりで

「ボーイズ」「ベイビー・イッツ・ユー」のシュレルズは4人組ですが

ボーカル1人にコーラスが3人というように

ビートルズがガールズグループの曲を積極的にカバーしたのは

コーラスが売り物の一つだったビートルズにスタイルが合っていたからかもしれません

 

「君を好きになりたいけど、僕は鎖につながれてる。恋の鎖に」みたいな歌詞です

ビートルズを聴き始めたころ

私はジョンの声とジョージの声の区別がつきませんでした

この曲のジョージの声はちょっとジョンみたいだったりします

 

(参考文献)

中山康樹「これがビートルズだ」(講談社現代新書)

大人のロック!編「ザ・ビートルズ全曲バイブル」(日経BP社)

ビートルズ「アンナ」

アーサー・アレキサンダーの3枚目のシングル「アンナ」のカバー曲です

ウィキペディアによるとアレキサンダーは歌手、作曲家らしいので

「アンナ」の作者はアレキサンダー自身かもしれません

アレキサンダーはジョンと同い年、1940年生まれです

1961年にデビューし、「アンナ」のリリースは1962年でした

ジョンも早熟ですがアレキサンダーも早熟の部類に入るでしょう

一度は引退してバスの運転手になりましたが

1993年にカムバックします

しかし、その年の9月に心臓発作で亡くなりました

アレキサンダーの「アンナ」はYouTubeで聴くことができます

 

さて、ビートルズの「アンナ」ですが

ジョンのボーカルがいい感じなのと

ジョージのギター、リンゴのドラムスが聴きものです

あと、歌詞の中の「just one more thing, girl」は

意味合いこそ違いますがAppleの発表会を連想します

「アンナ」のone more thing は

「あともう一つだけ言うけど」みたいな感じでしょうか

 

(参考文献)

中山康樹「これがビートルズだ」(講談社現代新書)

大人のロック!編「ザ・ビートルズ全曲バイブル」(日経BP社)

ビートルズ「ミズリー」

ジョンとポールの共作でボーカルも二人がユニゾンになったりハモったりの曲ですが

ボーカルも歌詞もジョンがメインという感じがします

同じ悲しい歌でもポールの曲は物語的であるのに対し

ジョンの曲は心の内側をさらけ出してるイメージがあります

 

「世界中が僕をひどく扱うんだ。惨めだよ」は

フラれたときの心境がよく表されています(笑)

ただ、曲調は明るいのです

それがこの曲の不思議な魅力でもあるんですが

ジョンは、こんな暗い歌詞を歌っているけどオレは大丈夫だと言いたいような

あるいは、暗い歌詞を歌う自分を笑い飛ばしているような

何か悲しい心をオブラートに包んでいるように見えます

この傾向は後に「ヘルプ」「ひとりぼっちのあいつ」といった佳曲を生み出します

ジョンが本当に心の傷をさらけ出すのは

ビートルズ解散後のソロ・アルバム「ジョンの魂」です