ビートルズ「シー・ラヴズ・ユー」

ジョンとポールの共作でボーカルも二人です

1963年3月22日発売のアルバム「プリーズ・プリーズ・ミー」が

全英チャートで30週連続1位を続ける最中の6月26日、

ジョンとポールは公演で滞在中のホテルでこの曲を書き上げました

録音は7月1日、発売は8月23日です

「シー・ラヴズ・ユー」は9月11日には全英チャート1位となり

その後も売れに売れてビートルズ初のミリオンセラーになりました

 

ヒットするべくしてヒットした名曲です

中山康樹は初期ビートルズの最高傑作と言っています

公演で忙しい中、それまでのどの曲よりいい曲を生み出すのですから

ビートルズ恐るべしです

一発屋になるような気配は微塵もありません

 

最後の「イェー」部分のコードがG6になっていて、これはジョージの発案です

これにジョージ・マーチンが6thはジャズのコードで古くさいからやめろと難色を示しましたが

ビートルズは自分たちの考えを押し通した、とされています

長いこと私はこの話を「フール・オン・ザ・ヒル」の出だしの話だと思っていました(笑)

 

(参考文献)

中山康樹「これがビートルズだ」(講談社現代新書)

大人のロック!編「ザ・ビートルズ全曲バイブル」(日経BP社)

ビートルズ「サンキュー・ガール」

「フロム・ミー・トゥ・ユー」のB面です

ファンへの感謝の歌としては「サンキュー・ガール」の方が直接的です

「僕がブルーな気持ちのときには元気づけてくれた」みたいな歌詞は

一人の女性に語りかける内容になっていますが

ツアーの移動で疲れていても

ステージでファンを目の前にすると元気が出たことを

そのまま歌にしたのではないでしょうか

 

ジョンとポールのハモリながらのボーカルが聴きものです

二人ともリード・ボーカリストまたはソロ・シンガーとして十分やっていけるのに

それが二人で歌い、しかもこの曲は完全な共作ですから

今となっては夢のような作品です

 

モノバージョン、ステレオバージョンとも第6テイクをベースに編集したもので

エンディングでハーモニカが入らないのがモノ、入るのがステレオです

ちなみにエンディングのドラムソロがないバージョン(第1テイク)は

Bootleg Recordings 1963で聴くことができます

 

(参考文献)

中山康樹「これがビートルズだ」(講談社現代新書)

大人のロック!編「ザ・ビートルズ全曲バイブル」(日経BP社)

ビートルズ「フロム・ミー・トゥ・ユー」

アルバム「プリーズ・プリーズ・ミー」は大成功でした

1963年3月22日に発売されると5月11日には全英チャートで1位になり

「ウィズ・ザ・ビートルズ」に1位の座を明け渡すまで30週連続1位を記録します

デビューアルバムとしてはこれ以上ない結果でした

シングル「プリーズ・プリーズ・ミー」が全英2位になったのが63年2月21日

「フロム・ミー・トゥ・ユー」が作られたのは2月28日で

レコーディングは3月5日、発売が4月11日です

この流れからするとシングルB面の「サンキュー・ガール」と同様に

「フロム・ミー・トゥ・ユー」はファンへの感謝の気持ちを込めた曲といえそうです

そして初の全英チャート1位となりました

 

「両腕は君を抱きしめて離すまいとしている。

唇はキスで君を満足させるのを願ってる」みたいに歌う中間部は

感謝というより、甘い言葉を更にたたみかける感じで

これも一種のファンサービスなのかもしれません

 

(参考文献)

中山康樹「これがビートルズだ」(講談社現代新書)

大人のロック!編「ザ・ビートルズ全曲バイブル」(日経BP社)

ビートルズ「ツイスト・アンド・シャウト」

デビュー・アルバムの最後を締めくくる派手なロックンロール・ナンバーです

オリジナルはトップ・ノーツというグループの曲で

聴いてみると別の曲かと思うくらいアレンジが違います

ビートルズがカバーしたのはアイズレー・ブラザーズのバージョンで

こちらはビートルズの演奏よりマンボ色が強いです

 

アルバム「プリーズ・プリーズ・ミー」の録音当日、ジョンは風邪をひいていて

「ツイスト・アンド・シャウト」の第1テイク録音後、

第2テイクのときのジョンはもう声が出なかったというのは有名な話になっています

それにしても絞り出すようなジョンのシャウトは凄まじいですね

ポールとジョージのコーラスもいいです

 

ライブ・バージョンはYouTubeでいくつか聴くことができます

ジョン、ジョージ、ポールの順に「アー」と声を重ねるところは

ライブだと一番盛り上がるところです

公式アルバムだと「Live at the Hollywood Bowl」の1曲目がこの曲で

いきなり「アー」から始まるショート・バージョンになっています

 

(参考文献)

中山康樹「これがビートルズだ」(講談社現代新書)

大人のロック!編「ザ・ビートルズ全曲バイブル」(日経BP社)

ビートルズ「ゼアズ・ア・プレイス」

ジョンが中心になって書いた曲でリードボーカルもジョンです

中山康樹氏はこの曲を「プリーズ・プリーズ・ミー」の弟と言っているくらいで

素晴らしいコーラスとビートルズらしいアレンジの、いい曲です

しかし、この曲で注目すべきは歌詞でしょう

「僕はある場所を持っている。心の中に。そこには悲しみも憂いもない」

みたいな内省的な歌詞です

まず思い浮かぶのは「ひとりぼっちのあいつ」

そしてもしかしたら「アクロス・ザ・ユニバース」につながる曲なのかもしれません

 

イントロのハーモニカは第10テイクにジョンがオーバダビングしたものだそうです

ハーモニカなしのテイクである第5第6テイク、第8テイク、第9テイクは

Bootleg Recordings 1963」で聴くことができます

 

(参考文献)

中山康樹「これがビートルズだ」(講談社現代新書)

大人のロック!編「ザ・ビートルズ全曲バイブル」(日経BP社)

ビートルズ「蜜の味」

スタンダード・ナンバーのカバーです

中山康樹氏は「どうしてこの曲をレコーディングしたのか」みたいなことを言っていて

まあ、確かにどうして?という気はするんですが

当時、ポールにこの種のスタンダード曲を歌わせると

リバプールでは右に出る者がいなかったらしく

デビュー前はこの曲をリクエストされることがよくあったそうです

つまり「蜜の味」はビートルズのレパートリーで、しかもウケがよかったわけです

それがレコーディングした理由でしょう

 

聴きものはポールのボーカルですが

I will return ~のところでベースがウォーキング・ベースになるところは

その後のポールのメロディアスなベースを知る者には

ああ、このころからポールは…と思わせてくれます

 

大人のロック!編「ザ・ビートルズ全曲バイブル」によると

「プリーズ・プリーズ・ミー」収録の「蜜の味」は

第5テイクにボーカルに重ねたもの(第7テイク)です

第6テイクはBootleg Recordings 1963で聴くことができます

 

(参考文献)

中山康樹「これがビートルズだ」(講談社現代新書)

大人のロック!編「ザ・ビートルズ全曲バイブル」(日経BP社)

ビートルズ「ドゥ・ユー・ウォント・トゥ・ノウ・ア・シークレット」

ジョンの作品をジョージが歌っています

リンゴのボーカルはアルバムに1曲、ジョージは2曲ということなのでしょう

ジョージはコーラスもできてリンゴより歌えるわけですから

 

録音日が1963年2月11日なので

当時のジョージはもうすぐ20歳とはいえまだ10代、ジョンは22歳です

ポールはジョンより1歳年下といっても

自作曲の名義をレノン=マッカートニーとする取り決めをするほど

ジョンはポールを認めていました

ジョージは末っ子みたいな扱いだったのでしょう

もしかしたらジョンはジョージの面倒をみてるつもりだったのかもしれません

 

さて、曲についてですが

「秘密を知りたいかい?君が望んでることさ。君に恋してる」みたいな感じで

アイドルが歌いそうな甘ったるい歌詞です

リンゴが出している拍子木を打つような音はドラムスティックを叩き合わせる音で

誰のアイディアなのかはわかりませんが面白い発想です

オーケストラやラテンバンドでは拍子木みたいな楽器クラベスを使いますね

坂本龍一の「戦場のメリークリスマス」の”コーン”という音は

あるライヴ映像ではクラベスを打って出していました

 

(参考文献)

中山康樹「これがビートルズだ」(講談社現代新書)

大人のロック!編「ザ・ビートルズ全曲バイブル」(日経BP社)